月と海の間で

ゆらゆらと 波にゆられて 思うこと

恋愛という実験

すごく前の話になりますけど 当時 私には 彼女がいました。

まあ 彼女にとって 私も 彼女だったのですけどね。

ある日 仕事に出かけるのに 乗ったバスの中に その人がいて 降りる時に

突然 手紙を渡されました。

いつも バスで見かけて 友達になりたいのですがと 書いてありました。

当時はまだ 個人が 携帯を 持ち歩く時代ではなくて 翌日 バスで合った時に

住所と電話番号を書いた紙を よかったら 連絡下さいといって 渡しました。

そしたらすぐ 連絡が来て 週末が休みで 遊びに来たいというので じゃあ

晩御飯でも一緒にということになりました。

私は 当時 フローレンスジョイナーのような髪をしていました。

腰までの スパイラルパーマです。 そして 彼女は 耳が見えるぐらいの ショート

カットに 当時は珍しい ハイライトを入れていて アメリカ人の美容師さんに やっ

てもらっているとかで その頃の 日本の美容院では できないような 自然な色の 

グラデーションが 自慢でした。

遊びに来た日に そろそろ ヘアーカットに行かないというのですが 越してきたばか

りの この町で どこに上手な美容師さんがいるか わからないという話に それなら

私が 切ってあげるということで その日は 遅かったので 翌日 また会うことに

なりました。

翌日 私のアパートの キッチンの床に 新聞紙をひいて 髪の毛を切り始めると 

妙な 空気が流れ始めたのです。

髪の毛が目に入らないように 彼女は 目をつぶっているのですけど 表情から

照れているのは 簡単に 見て取れました。どうしてだろう?と 私は 不思議

だったのは 私には 友達になりたいと書いてあった手紙の深い意味が まだ

わかっていなかったからです。

髪の毛を切り終え 私には 予定があったので 彼女には すぐに 帰ってもらい

ました。が 後で 電話が来て 「じつは、、、、、」と 告白が 始まりました。

他との間に ほとんど 壁を設けない私は OKしました。

相手が変わっても パターンを繰り返す 男性との恋愛の中で 私は 女性と

お付き合いすることに 少し期待を抱いていた部分もありました。恋愛の意味が

わかるかもしれないと。

1ヶ月ほど デートを繰り返した後で 彼女は 私の部屋に 引っ越してきたの

ですが 当時 会社で 責任のあるポストについていた私は 男性陣と共に 残業

することも多く そんな日 家に戻ると 不機嫌な顔の彼女がいました。

彼女は 私が 残業組の一人と 仕事が終わってから 外で 時間を共にしていると 

言いがかりをつけ始めたのです。当時 仕事が一番だった 私には 彼女の行動は 

少しも 支えになるどころか 逆に 妨げになるのを 感じました。

それを 話した後から 私の帰りが遅くなると 彼女は 別の女友達のところに 

泊まるようになりました。

わたしにとって それは 全く 問題ではありませんでした。

たまに 時間を作って 一緒に 出かけても 私にとっては 時間の無駄と思うような

ことが続きました。例えば、当時の私は スレンダーで ボディコンドレスを 着るこ

とが多かったのですが  そんな私を 連れ歩いては 私に振り向く男性に 彼女は私

のものというポーズをとって 男性の嫉妬の視線を 楽しむのです。

私は 見世物じゃないし 所有物でもないし 結局 女性と付き合っても 嫉妬は

つきまとうしで このまま 付き合いを続けることはできないと ある日 彼女に

打ち明けました。二人が 出会ってから 3ヶ月目でした。

そういえば 当時 ボディコンの女性は みんな ディオールプアゾンを つけて

いましたが 私は シャネルのエゴイストでした。とくに バスソープは お気に入り

でした。見た目は 軟派でも 硬派でいたかった私には ぴったりの香りでした。

そして その後 私は 別の町に ひっそりと 引っ越しをしました。

会社にも 彼女から 連絡が来たら 住所を おしえないでくれと頼みました。

それが 1ヶ月経った ある嵐の日、ドアのチャイムが鳴ったので 近所の男の子

だと思い ドアを開けたのです。近所の男の子とは 私が 人生相談に乗っていた

年下の子で 父親が 彼の母親の死後 すぐに 彼と同じ年の女性と出会い 一緒に

住み始めたことを 苦痛に感じ 薬に走ったことで 自分は敗者だと 決めつけ 

ベランダに 座りながら 自殺を 企んでいた時 外を通りかかった私と 目が合い

話をすることになったのです。彼は 泣いていました。父親が 自分と同じ年の

女性といるのが どうしても 許せなかったのです。

それで 私は 言ったのです。それは 命を落とすほどの 問題じゃないと。

お父さんは お父さんであり 男でもあると。あなたの お母さんが亡くなったこと

で 彼は彼なりに 寂しかったんだよと。もしかしたら その若い女性に あなたの

お母さんと 出会った頃を ダブらせてたのかもしれないと。そして 恋した 女性が

たまたま あなたと 同じ年だった それだけだったのだと。

目を真っ赤にしながら 彼は 今まで そのような見方に 気づかなかったと言って

これからは 父親に対する態度を 改めることを 目に涙を溜めながら 誓いました。

私には 彼の父親の思惑など わかりません。聞くこともできますが 親子であっても

人の恋愛に口出しするほど 愚かなことはありません。恋に落ちるものは その二人に

しかわからない 言語を話し始めます。外野には 理解できないのです。

 

そうです 彼女が ドアの外に立っていたのです。

私は 一瞬 息が止まりそうになりました。もう 会いたくない人だったからです。

が 外は 嵐の気配。その夜 彼女は 家で 一晩過ごすことになりました。

その時 彼女の口から 近所の男の子の話が出ました。

隣町と言っても 小さな町同士 どこからか 話が聞こえてくるのかもしれません

が 私は 彼女のこうした部分も 離れたくなった 理由の一つなのです。詮索。

恋愛は 駆け引きと言いますが 駆け引きのある恋愛は 私は できません。

いつも 全力投球か そうでなければ 試合終了かのどちらかです。

だから 家に戻らずに 心配させるとか 他の誰かといて 嫉妬させるとか そう

いうことが 全く 理解できないのです。

好きなら好きで 嫌いは嫌いです。

翌朝 外は 晴れていました。彼女は ウォーキングをしようと提案してきました。

それで 私は 断ればよかったのですが これが本当に 最後だからと 自分に言い

聞かせ ウォーキングに 付き合うことにしました。

なぜか 彼女は その日 遠くまで 歩こうとします。

それは 歩き終わったら さよならが待っていることを 先延ばしするかのように

でした。途中 私は 踵に かなり大きな 靴擦れができて たまたま 通りかか

ったところにあったお店で 絆創膏を 買う羽目になりました。

それで 戻ろうとおもったのですが さらに 先に行こうと 彼女が言うのです。

それで また これが 最後だと言い聞かせて 歩きました。そして 到着した

のは あるお花屋さん。そこで 彼女は 私に 好きな鉢植えを 選ぶように

言いましたが 彼女に お金を出してもらいたくなかったので 選びませんでした。

すると 彼女が サボテンの鉢植えを 選ぶと 支払いを済ませ 私に 手渡し

ました。店の外に出ると 私が 口を開くより 彼女が先に 言いだしました。

会いに来たのは きっと よりを戻せると思ったから。けれども 靴擦れしながら

歩く私を見て 自分が 私に 無理させていることがわかり このまま諦めて帰る

ことにしたと 言うのです。

私も、私という人にとって 終りは終りなのだと 言いました。

やり直しができる見込みがあれば それは終りには ならなかったと。

見た目に ボーイッシュを気取っていた彼女は 中身が こてこての女性でした。

そして 見た目が ギャルっていた私は 中身が めちゃくちゃ男でした。

家に戻ると 例の少年が 青ざめた顔で 外の階段に座り 私を待っていました。

何事かと聞くと 私と その女性が 出かけるのを見て 何か 悪いことが

起こるのではないか?と 心配していたのです。

彼との会話の中で 彼女が近いうちに 私を探し出して 訪ねてくると 言っていた

のです。

それから 少し経って 私は 勤めていた会社をやめ その町を 離れました。

その後も 数回 女性たちから 声をかけられることがありました。

筋肉質なゆえでしょうか?それとも エゴイストを使っていたせいでしょうか?

その時 ビートの時代を駆け巡った 男たちのことを思い出しました。

ニール キャサディーは 男でも女でも 会うものみんなが 恋に落ちたという

話を。